Evernoteの1万ノート移行にかかる本当のコスト
1万ノートの移行は、エクスポートボタンを押して終わる作業ではありません。調査、変換、確認、整理にどれだけ時間と気力が必要かを、現実的な目線で見積もります。
規模を先に理解する
1万ノートと聞くと、まずストレージ容量を計算したくなります。でも、実際に重いのはファイルサイズだけではありません。ノートの数だけ、タイトル、タグ、リンク、添付ファイル、例外的な書式が存在します。
100件のテストで問題が1つなら、1万件では100個の問題になるかもしれない。しかも、すべての問題が同じ形で出るわけではありません。
必要な時間
作業はおおむね、調査、エクスポート、インポートと整理の3段階に分かれます。
調査では移行先を決め、変換ツールを試し、サンプルを選びます。エクスポートでは全件の同期と書き出しを待ちます。インポート後は、タグ、フォルダ、添付ファイル、リンクを確認し、例外を直します。
機械処理が数時間で終わっても、人間の確認はそこで終わりません。1万ノートを全部読む必要はありませんが、代表的なパターンを見つけて、各パターンを確認する時間は必要です。
技術的な問題
- タグが階層や別の文字列へ変わる
- PDFや画像の参照先がずれる
- Evernote内部リンクが移行先で開かない
- 表、チェックボックス、色などの書式が欠ける
- 大きなエクスポートが途中で止まり、再開できない
この種の問題は、データが消えたというより、形式の変換で表現が変わった結果です。ENEX、HTML、Markdownを同じサンプルで比較すると、何が失われたかを把握できます。
整理システムの作り直し
Evernoteのノートブックを、ObsidianのフォルダやJoplinのノートブックへ1対1で移せるとは限りません。スタック、タグ、保存検索も、移行先に同じ機能があるとは限りません。
移行は、データの引っ越しと同時に整理方法の設計でもあります。先に「仕事」「個人」「資料」のような大きな単位だけ決め、細部は移行後に整えるほうが、最初から完璧に再現するより続きます。
見えにくい心理的コスト
移行中は、古いノートを削除してよいのか、どのアプリを選んでも後悔しないか、ずっと迷います。10年分の記録を動かすのは、ファイル操作であると同時に、自分の過去を整理する作業だからです。
新しいアプリの紹介記事だけを読んでいると、移行が楽しそうな部分しか見えません。手戻り、待ち時間、確認作業も最初からコストに入れておくと、途中で嫌になりにくいです。
移行前に準備すること
- 全件を動かす前に、難しいノートを30件ほど選ぶ
- ENEXを復元用、HTMLを閲覧用、Markdownを移行用として保存する
- タグ、添付ファイル、リンク、表の変換結果を記録する
- 問題を修正してから対象を広げる
- 元のEvernoteデータを、移行後もしばらく残す
移行の価格は、変換ツールの料金だけでは決まりません。戻れる状態を作る時間まで含めて見積もると、1万ノートでも無理のない計画になります。